僕たちは縫製工場である。
奈良県にある小さな縫製工場、そこで20名のスタッフたちと一緒に日々服作りを行っている。
切っては縫い、切っては縫い。
縫製とはとても素晴らしい仕事である。
丸太みたいな生地が数時間後には10万円以上するようなジャケットへと早変わりする。
それは技術であり、芸術とも思えるようなミシンに乗れない僕からすると”魔法”である。
服作りの限界(温度差)
そんな僕が縫製業界で起業したのは4年半前の2016年1月だった、
母親が縫製工場を経営していて、その努力がうまく報われていないと感じたことをきっかけに跡を継がずに起業した。
そしてこの業界に入ってすぐにMy Home Atelierというサービスを考えた、
このサービスは廃業が進む縫製工場で働けなくなった職人さんたちや、子育て中や介護中など”技術はあるがそれ以外がない”(時間や自由など)人たちに自宅で縫製を行ってもらうサービスだった、
このサービスは”ウケた”
ビジネスコンテストでは優勝し賞金ももらった。(100万円)
テレビには数十回出演したし、ガイアの夜明けにも出演できた。
2019年には経産省から「羽ばたく中小企業300」にも選出してもらい全国400万社の中小企業から300社に入った。
今年の4月にはこの仕組みを活かして在宅で医療用ガウンの縫製を行ってANAホールディングスとの共同プロジェクトを成功させた。
全国で登録している職人たちは200人を超え、厳しい試験を通過した職人たちは外に働きに出るように自宅で仕事をしてもらえ、
報酬も生活ができる金額をお渡しできているという自負もあり、大変喜んでいただいている。(と信じている)
僕はこのサービスを通じて日本の縫製業を次世代につなぐというビジョンを達成しようと思っている。
家でミシンが動く時間が増えて、自由に働けるようになれば服作りをやめないで良くなったり、新しい人生の選択肢として「在宅縫製士」が増えていくと思っているから。
僕たちはまだまだ小さい会社だ、しかしそれなりにこの業界に挑戦してきた。
そして気づいたんだ。
「何にも変わってない」
残念ながら僕たちは何も変えられていない。
もちろんそんなことはわかっているが、それでもあまりにも絶望を感じた。
それはやっぱりCovid-19が原因でもあるのだけれど、
縫製工場がどんどんと廃業していく現実を目の当たりにしたから。
そしてパートナーとして働いてきたはずのメーカーから命綱を切られ、ミシンにのる”理由”をなくしていく職人たちをたくさん見る羽目になった。
そして日本のメイドインジャパンはついに1%台に突入することになるのだ。
僕たちは何も変えられていない。
毎日死ぬほど楽しく服作りをしているのに、業界を変えることができていない。
ここには明確な温度差がある。
誰のための業界か
僕たちが楽しい理由をみんなに伝えたいと思った、
それは会社自慢でもなく、儲かっている自慢でももちろんなく、
本当にメンバーがみんな楽しく仕事してくれていて、
奈良県というとても田舎に愛媛、北海道などの遠方から来てくれたり、
大手メーカーの採用枠を蹴ってうちに入ってくれるメンバーもいる。
老舗の縫製工場から50代にして転職してくれる職人さんもいる。
東京や横浜、全国からインターンシップや就職希望者が多く来てくれる。
どうしてそんな会社になったのかを伝えたいと思ったから、
だって”楽しかったら”やめないだろう。
やめられないだろう。
僕たちが楽しい理由は1つ、
僕たちが主役だと思っていないことだ。
誰が主役か、それは子供たちであり、将来世代なのだ。
この業界には「自分たちが主役」だという大人が多い。
あまりにも多すぎる。
梅雨時期の蚊くらい多い。
うざったい。
確かに好きなことを好きな業界でやっているんだから楽しくて当然、
主役にもなりたいだろう。
だけどそれは違う。
主役は僕たちじゃない、子供たちであり、将来世代だ。
わざわざ説明する必要もないと思うが、子供たちは世界の希望であり、
日本の宝であり、子供たちが生きる未来を作るのが大人の役目なのだから。
僕たちは本気でそう考えている。
縫製職人さんたちの待遇をよくしようとするのは将来子供たちが「入りたい」と思える業界にするため。
僕たちがかっこいい写真で、かっこいい職場をアピールするのは子供たちが「働きたい」と思える職場にするため。
ガッツリビジネスやって儲けるのは子供たちが将来入ってきたときにボーナスを出してあげれる仕組みを作るため。
縫製業は僕たちのものじゃない、
今僕たちがやるべきことは定年も近いおじさんが工場のをもの扱いして切って捨てることでもなく、
捨てるための洋服をわざわざつくって捨てることでもなく、
互いに文句を言い合うのでもなく、
子供たちがこの業界に入ってくる数年後のためにいい環境を整えて待っておくこと。
何度も言うが僕たちは本気でそう思っている。
誰のための地球か
日本は環境後進国だ、
G7の中で環境に対する意識調査ではダントツで最下位だ。
6位のアメリカの半分しか関心がない。
レジ袋が有料化され「意識改革である」と言われているのに、
「経済的にレジ袋を買った方が得だ」と本気で言っている。
僕は僕たちの財布の中の年間のレジ袋代数千円なんてどうでもいい。
僕たちには綺麗な地球を子供達に残す義務がある。
そのためには「ものを大切にする」と言う元来日本の文化である常識を
残念ながら先進国で一番環境意識の低くなってしまった私たちが再認識し、大人も含めて学び直す必要があるのだ。
だって地球も子供達、将来世代のものなのだから。
作ることをお届けする理由ヴァレイソーイングパークの始まり
7月15日から僕たちは新しいプロジェクトローンチとそれに伴い商品を発売する。
ヴァレイソーイングパークというプロジェクトである。
このソーイングパークという名前には「自由に遊ぶ」という意味がある、
まるで公園で遊ぶように物づくりを押し付けず、自由な発想で自由に作る。
そして自分で作ることでものを大切にする心を育む、
同時に「そもそも作れるんじゃないか?マインド」を定着させたいと考えている。
そのために発表する商品がソーイングキットである。
このソーイングキットには縫製に必要な材料が全て入っている。
糸や型紙、縫製の説明書、布やチャックなどだ。
自宅にロックミシンがない人のために生地の端にはロック始末がすで施してある。
そして自宅でスペースが必要な裁断作業はすでに終えた状態で届くのですぐにソーイングの花形”ミシン”から始めることができるのだ。
このキットの作成には回答数400件を超えるアンケートの分析を行い、
元教師による指導なども取り入れており、実際に作業する際には説明動画をYouTubeで見ることができるようになっている。
とにかく挫折せず作れることを意識しているのだ。
このキットは小学1年生から始めることができ、親子の大切な時間を作るのにも一役買うだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=YFzTtHKfEUw
7月15日に発売される第一弾のキットで作れるアイテムは3つ
サコッシュ
エプロン
クリアバッグである。
クリアバッグには好きなおもちゃを中に閉じ込めることができるという究極の自由度を実現している。
中に食べ物を入れるのだけは勘弁してほしいが、それ以外であればなんでも入れて大丈夫。
この企画のスタートにあたりミシンメーカーのBrother様からも協力をいただいており、購入していただいた方から抽選で5名様にミシンをプレゼントする企画を行えることになった、
それは僕たちが掲げる
日本の縫製業を次世代につなぐ
というビジョンに共鳴していただけたから。
モノではなく作るを届ける
僕たちのソーイングキットは商品ではなく”作る”を届ける。
“作る”とは親子の時間であり、
“作る”とはものを大切にする心であり、
“作る”とはクリエイティブの原点なのだ、
この商品を買っていただいた方が必ずしも縫製業に来てもらう必要はないと思う、
自分の好きな夢を追ってもらいたい。
ただ、作るということを通して上に書いたような大切な気持ちや時間を育んてほしいのだ、
何度も書くが子供たちは宝物だ。
僕たちはこのヴァレイソーイングパークを通して子供たちが主役になる業界を作っていきたいと考えている。
プロジェクトは7月15日にスタートする。
ぜひご支援いただければと思います。
(7月15日にこの下にリンクを貼ります)