小さな違和感
先日20歳の子からこんな内容の質問を受けました。
服づくりをこれからまさに始めようとする子、
普段はこういう質問への答えはスラスラと書いて送るんですが、
珍しくパソコンをタイプする指が止まりました。
それは僕の心の中の、本当に少しだけ尖っている部分、
違和感とも言えるかもしれない、
綺麗に貼られた壁紙のほんの一箇所めくれている部分のように、
気にしなければ気にならない程度のつっかかりでした。
僕はこう答えました。
勇気を出してお問い合わせいただきましてありがとうございます。
まず結論から申し上げると「可能」です。
しかし「おすすめ」はしません。
なぜかと言いますと、ドール服は小さいがために加工賃が高くなってしまったり、最低ロットが大きくなってしまって弊社で行うメリットがお客様にとって少ないのではないかと感じるからです。
(もちろんしっかりお話しさせてもらって考えが変わるかもしれません)
しかしお客様のお考えはとても尊敬できますし是非実現してほしいと思います。
それにあたり、私からの提案ですがtwitterやその他の方法を活用して同じ思いのある「縫ってくれる仲間」を探してみてはいかがでしょうか?
弊社はどうしても工場ですし、加工賃以外にかかる費用がたくさんあります。(工場の維持費、税金、利益など)
そしてお金をかけるとモノはできるのですが、お客様の想いを全て汲み取れる物作りができるかどうかはわかりません。
ですので、同じお金をかけてでも同じ思いを持った仲間を探して服づくりを始めてみてはいかがでしょうか?
そしてその仲間が縫って追いつかないくらいの量になった時は同時に工場でもコストが合う金額になると思います。
冒頭でもお伝えしたとおり縫製は可能ですので生産させていただくことで弊社は利益がでます、しかし服づくりをしたいと思うお客様の最善の形で生産するべきかと思っていますので、不躾ながら「おすすめ」をさせていただけません。
ぜひお客様の熱い思いを共有できるチームができればと思っております。
そしてチームでの物作りが一番クオリティが高い物作りができると思います。
私たち外注工場にお願いするのはできれば「最終手段」であってほしいと思います。
この返信に対して、
質問者は
今までになかった選択肢を与えてくれてありがとうございました!
と喜んでくれました。
しかし僕の中にはまだ違和感が残っていました。
「何だろうなぁ、この違和感は」
そんなことを考えながら一日が経ちました。
そして答えが出ました。
違和感の答え
僕は日本の服づくりを、そして世界の服づくりを変えていきたいと思っています。
しかし僕たちが運営するMy Home Atelierが行なっている領域はあくまでも「服を作る」という領域です。
どうやったって、
感動するお客様(エンドユーザー)に出会うことはできません。
そしてエンドユーザー(消費者)が変わらなければ市場は変わらない、
そして市場が変わらなければ川上も変わらない。
ということです。
僕たちのブランディングがとてもうまくいって、
加工賃がとても高くもらえるようになったとします
それでもやっぱり上代(売値)の半分以下です、そしてその洋服は意図しない高値で販売されることになり、結果売れない。
そう思うのです。
そして僕たちがいくら「素晴らしい感動的な工場」だったとしても、
お客様には「無駄な価値の押し付け」になるのではないか、
と思うんです。
僕らが表現できるのはあくまでも100点までなんです。
決められた型紙を、どれだけ完璧に縫い上げるのか、
その100点以上の得点は出すことができません。
そして市場を動かし、人を感動させ、
職人の背景を映し出し、責任を持って世界を、消費を変えていけるのは
あくまでも「デザイナー」なんだと思ったのです、
デザイナーは100点に定義された世界を平気で10000点にも、1000000000点にも変えていける。
世界を変えたい表現をし、完璧な生産チームを作り、高いクオリティと、
不本意ではない価格で、お客様の消費を動かすことができる。
それが川上を動かすことなんだ。
そう気づきました。
そして20歳の子からもらった質問に対しての答えである、
「外注工場に頼むのは最終手段にしてもらいたいのです」
という僕の言葉、
それは裏を返せば
「メーカーの仕事をするのは最終手段にしたいのだ」
ということに気づきました。
今までももちろん自社ブランドを起こしてみたりしました、
それは「利益」という部分を考えると間違いなく最安で作れて、高いクオリティで受注に左右されることなく売上をたてることができる。という計算上の話でした、
しかし、
今気づいた感覚は全く別物です。
SPA(製造小売)は最強だ。
そう思うのです、
それは利益だけじゃない、
プロダクトのストーリー、
抱える人たちへの責任、
作るものへの責任、
ブランドとしてのお客様との約束、
どれを取っても、
「作るところから売って消費を動かすところ」までができるSPAがいいのではないか、
そう思ったのです。
どこかで僕らはアパレルメーカーの文句ばかり言ってるんじゃないか?
シーズンの浮き沈みを業界の責任にしていないか?
商品のクオリティを「お客様の約束」と思えているのか?
縫ってくれている職人たちの生活に目をそらしたことはないか?
どこかで「ミシンで世界は変わらない」と諦めていないか?
そう思いました。
そして何より、
「自分たちの限界を自分たちで決めてないか」
そう思ったのです。
決意、そして募集
僕たちはSPAへに切り替えます、
今月よりSPA事業に向けて動き出します。
もちろん従来通りMy Home Atelierの職人さんを募集しつつ、生産をメインに置きながら。
しかし徐々にSPAを加速させていきます。
そして
募集します。
僕たちの哲学である、
日本の縫製業を次世代につなぐ、
私たちの服づくりに関わる全ての人を笑顔にする
偏った需要と供給のバランスを今あるリソースを使って解決する
こんな想いを持ったデザイナーさん、
作るというリソースがあればまだまだ伸ばせると思っているデザイナーさん、
服づくりに集中したい。
そんなデザイナーさん、
僕たちの会社で一緒に服づくりしませんか?
僕たちは小ロットから大ロットの生産ができます、
一度は動かなくなったミシンを日本中の「自宅」という場所で動かすことで、
働けなくなった職人さんが働けるようになりました、
そしてそんな職人さんたち、僕たちと一緒にもっと自由に服づくりしませんか?
詳しい内容は
hideki@valleymode.com
こちらまでメールください。
共鳴できる方、お待ちしております。