こんにちは。
最近ありがたいことに僕のツイッターやホームページを通じて「服づくりして欲しい!」だったり、「着物のリメイクをして欲しい」「子供服を作って売りたい!」などなどたくさんのお問い合わせをいただきます。
弊社でも担当者を置いて返信させていただくのですが、
残念ながらどうしてもお仕事につながらないことが多いです。
原因としては「必要な知識がない」「コスト」「継続できない」の3つが多いように感じます。
私たちは服づくりの業界におりますので、
業界がどんな風に服づくりをしているかってだいだいわかります。
でも初めて「服を作って売りたい!」と思う方はどうすればいいかわかりませんよね。
そしてわからない中「それでもやりたい!」と思って勇気を振り絞って弊社にご連絡いただけるので、できるだけたくさんの受注をお受けしたいと思っています。
なので服づくりのイロハのイを僕なりに説明してみようと思います。
もちろん工場や発注する場所によって内容が変わりますし、コスト感も全然違いますのであらかじめご了承ください。
服づくりイロハのイ
今回は服づくりができなくなる3つの原因「必要な知識」「コスト」「継続できない」の3つに分けて説明したいと思います。
①必要な知識がない
アパレルの世界はとーーーーーーーっても広く、必要な知識は多岐に渡ります。
そのために僕たちみたいな専門家がいるわけですが、
それでも服づくりを行い、服を販売するということはお客様からすると「プロ」です。
それが昨日立ちあがったブランドであろうと、10年目のブランドであってもエンドユーザーからすると「プロ」として商品を購入します。
ですので「プロ」として必要な知識を揃えておいたほうがいいと思います。
a…服が作れる場所
服を作るためにまず想像するのは「工場を探す」じゃないでしょうか?
でも実は縫製工場と言ってもその種類は多岐に渡ります、そしてややこしいのはその専門の工場でないと作りたいものが作れません。
縫製工場の種類
小物、雑貨
袋物
カットソー
布帛 厚物(婦人)
布帛 薄手(婦人)
布帛(紳士)
シャツ工場
パンツ工場
お直し専門店
オーダーメイド店
仕立て屋
他にも寝具やら、車のシートやら、ネクタイやらいろんな工場があります。
それぞれが専門のミシンや常識を持っているので、適切な工場じゃないと服づくりはできません。
勇気を振り絞って電話しても「すいません、無理です」で終わってしまいます。
例えるなら
たこ焼き屋さん
和食屋さん
フレンチ
イタリアン
中華料理
などいろんな飲食店があるのに中華料理屋さんに「出汁の効いた美味しい和食を作って」とお願いしているようなものです。
そして話をよりややこしくしているのは縫製工場はホームページを持っているところが少なく、あったとしても親切に「このアイテムが縫えます」と書いているところが少ないことです。
そのため勇気出して電話したらまず自己紹介をし、アイテム名を伝え縫製が可能か聞くようにしましょう。
ちなみに弊社では布帛婦人服を中心に縫製しております。
(一部カットソー、メンズも可)
b…縫製工場の役割
縫製工場やメールをして「縫えますよ」と返信をもらったとします、
これで夢に一歩近づきました。
では次のステップです「型紙や資材はいつ頃入りますか?サンプルは?」などと聞かれることでしょう。
衝撃的な事実をお伝えします。
そうです、
縫製工場では型紙の手配も、資材の手配も、してくれません。
これが服づくりのハードルを上げる原因にもなっていますが、
縫製工場はあくまでも「縫う」という役割です、服を作るためには
工業用型紙(仕様書含む)
サンプル(量産を依頼する場合)
生地
服資材(ボタン、ファスナーなど)
が少なくとも必要です。
作りたいデザインがあって、縫製工場を見つけても基本的に生地の提案も型紙の作成もしてくれません。
ではどうするかというと「パタンナー」を探しましょう。
パタンナーさんは型紙を作ってくれる人です。
僕のオススメとしては工場を探すよりパタンナーを先に見つけるのがいいと思います。
それは工場に連絡しても「パターンは?」と聞かれるから、
というのもありますが多くの場合パタンナーが「協力工場」という形で縫製工場を知っている可能性が高いからです。
最初から工場を探すために手間をかけなくてもいい場合が多いので、まずはパタンナーを探しましょう。
ではパタンナーはどこで見つければいい?と思われるかと思いますが、
パタンナーは弊社でも紹介させてもらえますので、ぜひご相談くださいね。
またパタンナーによっては企画の立ち上げから手伝ってくれる人がいたりするので、そういう方だと「生地や資材の手配」も手伝ってくれる場合もあります。
パタンナーを見つけたらパタンナーさんと打ち合わせをして自分の作りたい服の形や素材について相談してみましょう。
まだまだたくさん必要な知識はありますが、
まずは「問い合わせる工場の種類」と「型紙と資材がないと縫製工場は機能しないのでまずパタンナーを探せ」という基礎知識を覚えておいてください。
ちなみに弊社にご連絡いただけますとパタンナーの紹介および、資材屋さん、生地屋さんも直接ご紹介差し上げますので、ぜひご相談くださいね。
②コスト
コストに関してははっきり言って「え、そんなにいるの」というくらい余裕を持っていてください。
ちょっと副業で売りたい人とそれでご飯を食べたい人などによってもちろん必要資金は違いますが、
人を雇うコストをかけず、自分で型紙を引いてコストも削減しているにも関わらずそれだけで生活するのは大変なデザイナーはごまんといます。
生地の仕入れや型紙の作成などは製品が出来上がる前に発生する費用ですし、
販売後に入金があるまで加工賃も含め全てを立替える必要があります。
ですので、資金には十分な余裕を持っていた方がいいかと思います。
a…必要な費用
必要な費用には2種類あります、「固定費」と「変動費用」です。
固定費とは商品が売れようが売れまいが必要な資金です
変動費用とは量産で作る枚数によって変動する費用です。
大体の目安を作るためにブラウスを2色2サイズで20着作り、20着が全部売れることを想定します。
固定費 ¥57,000-¥93,000
パターンメイキング費 ¥13,000-25,000(仕様書作成含む)
最初の型紙を作るための費用です、こちらとは別途出力費用で1パーツ100円などかかる場合もあります。
1stサンプル費用 ¥13,000-25,000
縫製工場に最初のサンプルを依頼します。
こちらのサンプルは商品にはならず、このサンプルを元に型紙を修正します。
サンプル用資材費 ¥6,000
内訳としては¥1,500/mの生地を1.5m発注したとして¥2,250ですが、カット代¥1,500、送料¥800生地だけで¥4,550
詳細は省きますが、
芯地、ファスナー、ボタン、それぞれの送料などを含め合計¥6,000
パターン修正費用 ¥6,000
1stサンプルをもとにパターンを修正します、どれだけプロのパタンナーであっても1発で完璧なパターンを作ることはとても難しいことです、生地によって特性もありますし、
作る形はシンプルでも工場によって手が違うこともあります。大体修正の場合は1パーツ700-1000円ほどです。
グレーディング費用 ¥6,000
修正が終わったらサイズの展開をする必要があります、別のサイズを作成するのでバランスが変わったりすることもあるので新しいサイズのサンプルも作ることをお勧めします。
こちらも1パーツ700-1000円ほどです。
2nd サンプル費用(必要であれば) ¥13,000-25,000
1stサンプルを作成し、修正が多い場合は作成します。
このサンプルをサボってしまうと「完成品」としてのサンプルがない状態で量産を進行することになりますのでトラブルの原因になります、修正が多い場合は必ず2ndサンプルを作るようにしましょう、また経験が少ない場合は各サイズでサンプルを作ることをお勧めします。
ここまでが固定費です。
量産をしようが、サンプルでドロップしようが、量産が売れようが、売れまいが必要な費用です。
ちなみにこの費用は1型の費用です。
5型作るなら5倍、10型作るなら10倍必要です。
デザイナーでご飯を食べてる方は1シーズン20型-45型くらい、年間で40型-90型作っています。
単純計算ですが、固定費だけで90型作るために500万円-837万円使うことになります。
ここに記載してませんが、ホームページを作る場合や、展示会、インビテーション用の写真撮影、モデル費用などなど、プロのデザイナーとして食っていくためにはとてももたくさんの固定費が必要です。
変動費用 ¥136,300〜180,300
量産資材代
用尺(必要な生地の長さ)を1.5mだとして、生地エス(生地傷)などを考えて余分に22着分(2色)発注します。
例えば白11着、黒11着だとすると(予備含め)
白16.5m ¥24,750 + カット代¥1,500
黒16.5m ¥24,750 + カット代¥1,500
送料800円
副資材 ボタン 100円 ファスナー 60円 芯地 150円 合計310 x 20着 = 6200円
送料800円
総合計 ¥60,300
縫製加工賃
仕様によりますが2色2サイズの20着のブラウスだと
¥3,800-¥6,000 x 20着 = ¥76,000〜¥120,000
立替合計 ¥136,300〜180,300
ほどになります。
つまり固定費と変動費を合わせて、
最低でも1型 ¥193,300〜¥273,300の費用が必要です。
この金額をベースに商品の上代(売値)を決めていきます。
販売方法が直販(D2C)である場合は問題ありませんが、店舗に下ろす場合は委託と買取によっても違いますが、40%前後は店舗の利益になりますので、
60%で利益を出せる価格設定にする必要があります。
必要な費用をちょうど間で¥233,300だとすると、
¥11,665の費用が1着にかかっていることになります。
例えば上代を¥20,000に設定した場合店舗の卸値が¥12,000になるので利益は¥335になってしまいます。
1着作って¥5,000くらいは利益をとりたい!という場合は上代を¥28,000-に設定して¥5,135-の利益をとるか、それとも店舗にはおかずネットなどで直販を行うことです。
ちなみに20着作りましたが、
15着しか売れなかった場合は¥11,665 x 5着 = ¥58,325の経費が他の15着に乗りますので、
原価が¥15,553-になってしまいます。
¥20,000で卸を行なった場合は20着中15着の販売を行えるという「高得点」を取れた場合でも¥53,295の赤字になってしまうのです。
つまり、
¥20,000の高級ブラウスを20着作って売ったらおこずかいが稼げる。。。
と思っていたらそんなことは全然なく、かといって¥28,000-では売れない。。。というようなことが起こってきます。
この状況を発展させながらD2Cを頑張るとか、卸しの条件を少しずつ良くしていくとか、
もっと売れるようになると、
そんなことを考えながら続けていくとなると、日常の生活費も合わせてかなりの金額のキャッシュを持っていないと続けることができないと思っています。
ちなみに僕は「デザイナーズブランドでご飯を食べていこうと考えて立ち上げるなら最低でも600万のキャッシュを持っていてください」とお伝えしています。
理由としては貧乏生活をするとしても年に2回の展示会を行って、
固定費を削りまくって自分でやって半分にしたとして、
1シーズン目はあまり売れなかったと想定しての資金です。(貧乏生活していても都内だと20万/月は必要だと思うので年間240万円は必要)
もちろんすべての方に該当するわけではありませんが、
服づくりには思っているよりもお金がかかりますし、思っているより回収できません。
1着数百円の利益のために「売れないリスク」や「苦労」をして、
それでもやりたい!という方が少ないかもしれませんが、それでも挑戦がなければ結果はありません。
厳しい戦いでも誰でも最初のステップはあります。
ぜひ諦めずに挑戦してください。
③継続できない
上記の①や②の問題で多くの方が諦めてしまいます。
故に「続ける」こと自体ができなくなってしまいます。
正直ブランドとして食べていくには相当の覚悟と現金と時間がかかります。
たまに「服を作ったらめっちゃ売れた」という方もおられますが、
その1つのアイテムはいつまで売れ続けるかは誰にもわかりません、
なので新作を作る必要もありますし、そうでなくてもコツコツと時間をかける必要があります。
何事も一朝一夕では成りません。
僕の会社も立ち上げから数千万円の赤字と借金をしました。
それでも少しずつ、本当に少しずつ、コツコツと続けてきた結果なんとかご飯を食べていけるように成りました。
みなさんに「夢」があるのなら、その夢を叶えるための「時間」と「費用」をかけながら、着実に前に進んでください。
弊社でできるアドバイスやもちろん縫製はできる限り行います。
がむしゃらに夢を追うのではなく、
しっかりとした知識をつけた上で、計画に則って夢を追っていってください。
そうすると80%くらいの可能性では成功すると思っています。
質問などがある場合は是非是非お問い合わせくださいね。
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