僕が縫製工場を始めたのは2016年、25歳の時だった。
未経験から始めてMY HOME ATELIERという仕組みを作った。
日本中で悔しい思いをしている縫製職人さんたちが活躍できる場所を作りたいと思ったからだった。
眠る縫製士なんて嘘っぱち
看護師であれ、保育士であれ、縫製士であれ、
人材不足などが謳われる職業で時たま使われる言葉
「眠る◯◯」
僕はその言葉をあまり使わない。
なぜかというとそれはあまりに現実を美化しているからである。
例えば「眠る看護師を見つけてくる」というと聞こえはいい、あたかも魔法で眠らされた看護師さんを白馬に乗った王子とまではいかないが、誰かが起こして
「あら、起こしてくれたのね、ありがとう」
なんて言ってもらうイメージが先行する。
しかし現実はどうだろうか?
本人たちが眠りたくて寝ているのではく、働きたくても職場環境が悪かったり給与が適切でなかったりした結果辞めざるを得ないのではないだろうか。
同じ問題は保育士でもそうだろうし、縫製職人も一緒だ。
ほとんどの人たちが子供の時から夢を見て努力してなんとかその職業を勝ち取った、その結果理想と現実の壁にぶち当たってやりたくてもやれない現実に落胆し、悔しいながらにその職を離れているのが現実だろう。
知り合いの縫製関係の方は60を過ぎてから縫製の仕事がなくなったということでコンビニで深夜のバイトを始めたと聞いた。
やりたくてやっているわけじゃない、ただ好きなことするには大きな壁がある。
「変化する人しか残れない」
これも現実だけれど、あまりに厳しく辛い現実だと思っている。
言葉はまやかし
言葉はいつもまやかしで、リアルを表現することはできない。
時にそれは武器になり、時にはそれが人の危機感を薄くさせる。
ファッション業界において現状は本当に深刻になっていると感じている。
ファッションは類稀なる「経済資本主義の象徴」だと思っている。
競争によって低価格化が進み底の底まできてしまった、規模の経済で大量生産をすることで流通数を多くし価格を下げた。
その結果得られたものは多く、たくさんの人が服を通して自己表現をする自由を手にした。
それと同時に失ったものも多く服作りの前提に「規模の経済が成り立つかどうか」が壁として聳え立った。
その結果マジョリティ向けの商品のみが製造される仕組みになり、マイノリティは排除された。
マジョリティには生きやすく、マイノリティには生きにくい。
そんな社会になってしまった。
1億総マイノリティ時代
風の時代なんて言うけれど、
僕は今は個の時代、総マイノリティの時代だと思っている。
例えば一人一人好き嫌いがあって、例えばセロリが大好きな人はマイノリティだと思うし、スポーツによって体型が違うのもマイノリティだろう。
派手が好きな人が30%で大人しいのが好きな人が70%だとすると派手好きはマイノリティだ。
同じように性的マイノリティは10%いて、国民の7.6%はなんらかの障害を持っている。
僕はめちゃくちゃ目が悪いからメガネは必須で、洋服を選ぶ時に「メガネをする前提」で選ぶから選べる服も偏ってしまう。
誰だって何かのマイノリティであり、マジョリティでもあるのだ。
これからのファッションについて
身の安全を守るという洋服が持つ役目をほぼ洋服が満たした今、
ファッションの次のミッションは環境保全と自己表現だろう。
そのためにはどちらのミッションにおいても大量生産とは相性が良くない。
だって規模の経済を成り立たせるには一定規模の量を作らなくてはいけないし、
そうなるとどうしても廃棄や求められていない価格での販売、そして低い価値で提供される服には二次流通価値も低くエンドユーザーを通じて破棄されるサイクルも早くなるだろう。
こと自己表現においても本当に着たい!と思う服はおそらく店頭にある「1万人中数百人くらいは好きだというだろう」という洋服の中から選んでいくことになる。
これから社会は多様性を認め合う必要がある。
どんなジェンダーも、障害も、どんな年齢も、どんな国籍も。
そしてその社会を実現する一番の方法は洋服を多様化させることであると僕は考えている。
そして同時に脱大量生産をしなければいけないと思っているし、何よりも洋服を多様化させるためには多様化のアイデアを持つデザイナーたちの活躍が必須なのである。
今までヴァレイではデザイナーたちが多種多様な洋服を作ることができるよう、自己表現に限界を作らないようMY HOME ATELIERというサービスを通して極小ロットでの生産を可能にしてきた。
デザイナーたちが作り出す自己表現のツールをより多く、尚且つロスを出さずに生産してきたのである。
しかしまだまだ足りない。
僕たちの夢はまだまだ遠いのである。
1万人のファッションデザイナーと1億人が着たい服を作るプロジェクト
そこで僕たちは縫製工場という肩書きを捨てることにした。
大衆が買うであろう洋服を作ることに嫌気がさした。
というか放っておいても誰かがやるだろう、だから僕たちはマイノリティの洋服を作ることにした。
1つ大きな注意をしておきたいのだが、
「マイノリティの洋服を作る」なんていうとジェンダーレス!とか障害者向け!とかいろんなことを想像されるかもしれないがそうではないということだ。
先にも書いたが僕は誰もがマイノリティだと思っている。
目がいいとか悪いとか、背が高いとか低いとか具体的な部分だけじゃなくて、
もっと派手なのが好きとか、もっとこんな形がいい!とか、
例えば明日好きな人に告白する!って人も状況によってはマイノリティだと思うのだ。
とにかく趣味趣向も含めて少数派の人がとても愛してくれる洋服を作りたいと思ったのだ。
そしてそれを生み出すのは紛れもない、デザイナーである。
現在国内には8000人のファッションデザイナーがいると言われている。
そしてファッション専門学校に通うのは12000人である。
数千人が卒業して、そしてデザイナーになれず辞めていく。
そして残ったデザイナーたちも生きていくためにやりたくないデザインをするか、なんとかもがきながらほんの一握りが成功を掴んでいく。
その難しい壁もまた面白みがあるとも思う、しかし流石にハードルが高すぎるので少しだけ下げておこうと思うのである。
だから僕はこの10年の間に1万人のファッションデザイナーたちが僕たちと関わりマイノリティな服を作り、1億人の国民が本当に自分が着たい服を選べるようにしたいと思うのだ。
何度も言うが別にわざわざ特殊な人が専門的に着れる洋服だけを作るわけではない、誰しもがマイノリティであり誰しもが探せば適切なものが見つかり、選べる社会を作りたいと思っているのだ。
新プロジェクトについて
僕たちはこの目標を達成するためにプロジェクトを始めた。
それが「新-ARATASHI-」というプロジェクトである。
アタラシではなくアラタシと読む
このプロジェクトはファッションデザイナーの募集から始まる。
詳細に関してはエントリー後説明を行うのだけれど、大まかに説明すると
ファッションデザイナーたちからデザインを募り、僕たちの仕組みをつかて製造、販売を行っていく。
デザイナーたちは初期コスト0で自分の洋服を作ることができて、お客様は今までに存在しなかった尖った洋服を手に入れることができる。
もちろんリスクは0ではない。
しかしこの仕組みを使うことで本来流通すべきもので、「数を作れないから」という理由だけで流通しなかったものが流通するようになる。
そしてそれを選んで購入することができるようになるのだ。
僕たちはこの新-ARATASHI-を通じて1万人のファッションデザイナーの「作りたい」と1億人の「着たい」を叶えたいと思う。
誰しもが自分が期待洋服を見つけられ「数を作れない」という理由で着る自由が奪われないような社会を実現したいと思う。
このプロジェクトはぜひプロのデザイナーたちに届いて欲しい。
スタートアップのデザイナーでも、学生でも参加してもらえるプロジェクトだが、
プロのデザイナーたちにこそ、未来を作るデザイナーたちにこそ参加してほしいと思っている。
少しでも気になった方はかきメールアドレスから「デザイナー応募」と記載してメールを送ってほしいです。
返信より条件に関する注意点、及びエントリーシートを返送します。
ぜひよろしくお願いします。
info@aratashifashion.com